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VillaTokyo

 

月曜日が日曜日の場所で

11-18 November 2011

 


 
プランB

Ciprian Muresan, Dog Luv, 2009, vidéo, HD, 30min.56sec. After a screenplay by Saviana Stanescu. Video still Ciprian Muresan.
Courtesy Plan B, Cluj/Berlin

プランB

チプリアン・ムレサン

不可解にも、2冊のフランツ・カフカの本が解け合ってしまった。作品の動機と見 なされるはずの恍惚的な破滅行動、あるいはカフカの著作にたゆたう全体性の ようなものと再び繋がることへの欲求のいずれもが叶えられぬままに。『ヨハネに よる福音書』の全文が、手書きでコピー用紙に写され、輪ゴムでまとめられてい る。まるで、難関試験への準備中といった様子だ。ドローイングでは、ハンス・ホル バインが描いた『大使たち』のなかの、アナモルフォーシスの骸骨が正面を向い ている。本来、そのアナモルフォーシス、あるいは不明瞭な何かは、大使たち自身 の身体に付着した“しみ”とされている。作品内でチプリアン・ムレサンは、文化史 における時の流れ、シンボルの所有権とその分類法、そして、儀式の衰退へと想 いを馳せる。 ホルバインの『大使たち』での骸骨は、限られた角度から見た時のみ判別可能 なため、まずは認識論、つづいて神秘主義的観点から、鑑賞する者を十字架 の真下へと位置づける。この傾斜したパースペクティブによって、正面から骸骨 の出現と向き合うことが不可避なものとなる。その歪んだパースペクティブによっ て置き換えられたイメージへのコード化されていない回路は、言葉足らずに省 略された芸術史の「流れ」を支える、検証と排斥のメカニズムについての批評な のだ。これは、人間以外の動物の定義をめぐる謎に包まれた不穏な対話である 『Dog Luv』の設定にも表れている。犬についての定義はすなわち、様々な意味 での無名性と矛盾や、宙に浮いたまま絡み合い混合する、固有の特質や衝動、 生涯についてを指し示している。この変換こそ、主観と客観、制度と世界という 理路整然とした地図の上に、痕跡を残すのである。 近作のビデオ作品は、催眠効果付きの場違いな正教会の洗礼式とでも言い表 せるものだ。儀式が行われるのは、何の変哲もない白い空間で、宗教的背景を 想起させる小道具がいくつか置いてある。そこで、家族や友人が、スピリチュア ルなやりとりに立ち会う。それは子供が歩むであろう、宗教的規範からやや外れ た状態から、服従と約束された救済へといたる道のりなのである。パフォーマンス の台本には正教会の聖書聖典が使用され、罪や暴力、恐れや救済について細 かく追求される。だが聖礼典は、耐え難いほど場違いなサンタクロースによって執 り行われる。主人公の持つ異端的本質は、テキストと儀式作法による従順なパフォー マンスと、作品が解釈を打ち破る可能性との間で永遠に揺れ動くのである。この 映像が語るのは、キリスト教自体が演出し、悪用してきた混乱と、再生のシンボルや、 約束された救いについてだ。そして近年の、逆転した混乱についても語る。スピリ チュアルな生活は、商業の波に飲み込まれ、経済が宗教を語り、利用し、執行する。 経済主体の世界では、現在が将来的な経済価値によって構成される。そして善 良で聞き分けの良い市民にプレゼントを運ぶのもまた、商業の世界なのである。 「サンタクロース」が表現するのは、魂と自己、そして社会的身体の経済である。 年中サンタになることが許される、そこにおいては、クリスマスはアンチ・クライマッ クスでしかないのだ。


チプリアン・ムレサン: 1977年生まれ、クルージュ在住。